場に居ながら「個を見る」という経験〜「プロセスの知を磨く」ワークショップの振り返り〜

少し時間が空いてしまいましたが、10/26(金)、10/29(金)の二日間、「プロセス・インテリジェンス」ワークショップを行いました。このワークショップは、経営学習研究所として、代表理事の中原淳先生と企画・実施しました。

 

ワークショップをはじめとする、多様な背景や考えを持つ人たちが出会い、対話することによって、個人ではたどり着けないような新たな知、アイディア、発想が生まれるような場や、そういった場を作りたいと考える人が増えているように感じます。場づくりのヒントとなるような、様々な手法を紹介する書籍なども多く出ていますね。

そんな中、私たちは、ふと立ち止まりました。そもそも、そういった場をつくりたいと考えるファシリテーターやコーディネーターたちが、身につけていなければならないものは何か。私たちはそれを「プロセスの知」と呼ぶことにしました。

「プロセスの知」とは、

「その場で起きている人々の相互作用、人々が経験しているであろう出来事を、つぶさに観察し、見極める知」

です。私たちは、その場を構成する人たちが、「今、どのようなプロセスにあるのか」きちんと見ることができているでしょうか。

 

「プロセスの知」を磨くため、私たちは数回の連続ワークショップを企画しています。

前置きが長くなりましたが、今回行ったのは、その記念すべき第一回目でした。「プロセスを見る」と言っても、様々な視点、見方があると思いますが、第一回目は、「個を見る/理解する」ということにフォーカスしたワークショップを行いました。

 

一回目のワークショップには、大学も、学ぶ領域も経営学、教育、文化人類学など様々な大学生・大学院生8名が集まってくれました。会場はとある幼稚園。私が子どもの頃に通った場所です。

参加してくれた学生さんたちは、二日間、年長クラス(ブルーバタフライ)3名、年中クラス(イエローバード)3名、年少クラス(ピンクバニー)2名に分かれ、子ども達と一緒に過ごしました。

 

一日目、子ども達が登園する前に集合。まずは中原先生と私から、このワークショップの趣旨と一日目にやってもらいたいことを説明しました。この日やったことは、大きく2つ。

①誰か一人着目する子どもを決め、彼、彼女がその日どんな出来事を体験し、どんなことを感じ、何を語り、どんな発見(驚き、喜び、など…でも可)があったのか、観察すること。

②子ども達が帰った後には、それを4枚の紙芝居に表現してもらうこと。

プロセスの中に「いる」こと、プロセスを「見る」こと、プロセスを「表現する」こと。これが今回のワークショップです。

色々な見方があると思いますが、「関わることで見えてくるもの」というのが、私たちが大切にしたポイントです。

 

9時を過ぎ、子ども達がだんだんと集まってきました。参加者の皆さん、まだ表情も身体も固く、子ども達とも微妙な距離感を保っていることが、写真からもおわかりいただけるのではないでしょうか。

 

この日の幼稚園は、年長・年中クラスの子ども達が古くなったホールの棚にヤスリをかけ、ペンキを塗るという大イベント。私が幼稚園の頃、そのもっと前から毎日使っている棚です。古くなるわけですね(笑)。その後は、外遊び、お弁当と続きます。年少クラスの子ども達も、お庭に出て遊びながら、時々ペンキ塗りの様子を見に来ます。

参加者は子ども達と同じ場で一緒に過ごしながら、特定の子どもを観察します。「最初にそばに寄ってきてくれたから」という理由で観察する子どもを選んだ人もいれば、「近くに来なかった子をあえて選んだ」という人もいました。どちらが正解ということはありません。

参加者が子ども達を観察し、観察者である学生さんを中原先生、私、ドキュメンテーションチームの井上さん、池田さんが観察するという入れ子構造になっていたわけですが、すぐに子ども達と打ち解け手をつないでいる人、離れたところから眺めている人、子ども達の中に入ろうとしながらもぎこちなくすぐに離れてしまう人など、子どもとの距離の取り方も様々。 子ども達の方も、すぐにお膝に座って甘えている人、お兄さんお姉さんの洋服の端をちょっとつかんでみる人、離れたところからじっと見ている人もいます。

降園時間までの間に、自ら工夫しながら子ども達と関わるようになった人もいれば、お庭である子どもに追いかけられたことをきっかけに次第に子ども達の世界に巻き込まれていった人もいます。

子ども達が帰った後は、それぞれ観察した子どもについて紙芝居を作ってその日見たことを発表し、園の先生方から普段のその子の様子などを含めてフィードバックをいただきました。ここでは詳しく書きませんが、その他にも「見る」ことを考えるきっかけとなるようなエクササイズを行いました。

 

この日一日だけでも、 参加者の皆さんは「個を見る」という一言に隠された色々なことに気づきました。

おそらくタイミングは様々だと思いますが、第一に皆さんが気づいたことは、

「子ども達と同じ姿勢、目線で関わることで、子ども達の輪の外側にいて”壁”になっている時には見えないことが見えてくること。」

ではないでしょうか。

子ども達の様子を「見に」来た参加者たちが、対象から離れた安全な(?)場所から子ども達の様子を眺めているわけにはいかない現実(笑)。このワークショップにおいて、「見る」ことと「関わること」は切っても切れない関係性にあるのです。

このことは、「関わる」ことによって「見ている」私たちが、見ている(≒関わっている)子ども達に少なからず作用していることも意味します。「見る」ことが次の「関わり」を、更なる「見る」を生んでいるというわけです。

同時に、「見ている」私たちが、子ども達から「見られている」ということでもあります。ある参加者が手に持っていたメモをしまった途端、子ども達との関わりが始まったという出来事もありました。担任の先生から、参加者の行動を後ろからじっと見ていた子どもがいたというお話も聞くことができました。子ども達は、私たちが自分たちと関わろうとしているのかどうか、私たちの姿勢をしっかり「見て」いたのですね。

一方で、対象と決めた子ども一人と深く関わることで見えなくなるものがあるということにも、参加者の人たちは時間が経つにつれて悩まされるようになっていったようでした。

 

 

その経験をふまえ、土日を挟んで迎えた二日目。

一日目に「個を見る」ことが「個」へのまなざしだけでは終わらないことを実感していただいたことをふまえ、今度は、「関係性の中に個を捉える」ということを行いました。

対象に決めた子どもを見るだけではなく、他の子ども、先生、自分、クラス全体、ものや環境などとの「関係性」に着目して観察をすることにより、その「関係性」に表れる「個」を理解することを目指しました。

この日のナーサリィ・スクールは、朝一番の全体集会での歌の練習、「お店ごっこ」のお話、各クラスごとの英語、リトミック、その間のお庭での自由時間という時間割。全体での活動が多かった一日目とは、子ども達の過ごし方が異なります。

参加者の皆さんの子どもとの関わり方も、一日目とは違いました。一つは、参加者の皆さんが一日目より自然に子ども達の中に「居た」こと。身体の使い方も一日目とは違っているように見えます。例えばこの記事の5枚目の写真と、下の写真、同じ人ではありませんが見比べていただいて違いを感じていただけますでしょうか。

同時に、観察している一人の子どもだけではなく複数の子ども達と関わろうとしている様子も多く見受けられました。

自分の観察している子どもとその周りの子どもとの関係を見るため、自ら遊びのリーダーとなり、観察対象の子どもを含んだグループを作って遊ぶ参加者や、観察対象の子どもではない別の子どもと関わることにより、自分と観察対象の子どもの関係が一歩進んだと感じる参加者など。

二日目も、「見る」の後には「表現する」ワークが待っています。

この日は、参加者達が見た子どもとその周りにある「関係性」をレゴで表現してもらいました。このワークの目的はきれいな「作品」を作ることではなく、レゴで表現したものを通して「語る」こと。園の先生方からもフィードバックもいただきました。

 

最後は車座になり、二日間の感想を思いついた人からシェアしました。全てはここでは紹介しきれませんが、語られた感想の一つ一つに、学びがちりばめられています。

・対象者との距離感を試行錯誤した二日間だった。二日目は「個」を見ながらも子ども達にどうアクションしていくかを考えた。

子どもの行動には、全て理由があることを感じた。

・園の先生達を見ていて、全体が壊れない範囲で個が最大限に自由にいられる限界をわかっていると感じた。

私自身、「個を見る」という一見とてもシンプルな問いかけが、「一人の人を見る」という言葉そのものの意味だけでは片付けられない奥深い意味を持っていることを改めて実感した二日間でした。

個を追って見ること、周りの人との関係性を通してその人を見ること、クラス全体の中にいるその人を見ること、自分との関わりを通してその人を見ること、ものや環境との関係性を通して見ること。一人の人を見る様々な視点を体験しました。

また、関わることをせずに壁となって見ること、直接関わりながら見ること、その人の属していない別のグループにいながら横目で見ること、離れていて時々コミュニケーションをしてみること、といった、見ている対象と自分との関係の作り方も様々でした。

さらに、瞬間を切り取る、あるアクティビティを切り取る、一日の流れを通して見る、普段の様子を含めて見る、家での状況なども含めて見る、入園した当初からの様子を含めて見るなど、その人が経験しているプロセスの切り取り方も一つではありません。

 

今回は幼稚園で子ども達を見るワークショップでしたが、ここでの学びは、大人が集まる場にも活かせるのではないかと私たちは考えています。もちろん、この全てを短時間で、一人の目で実現することは不可能です。そのため、どんな実践者と共に場をつくり、共に場を見るかということが重要になってくるのではないでしょうか。

最後になりましたが、ご参加いただいた8人の皆様、企画に全面的にご協力いただいた先生方、ドキュメンテーションチームの井上佐保子さん、池田祥子さん、そして今回は残念ながらご参加いただけなかった皆様、本当にありがとうございました。

さらに最後になりましたが、一緒に企画をさせていただいた中原先生、いつもラーニングフルでエキサイティングな機会をありがとうございます。

 

「プロセスの知を磨く」ワークショップは、「個」を見た今回では終わりません!今度は場所を変えて、見る対象も変えて、実施する予定です。皆様のご参加をお待ちしております。

 

このワークショップに関する中原先生のブログ、皆さんの感想もご覧ください。

三田くんの感想

宮本さんの感想

木村さんの感想

山根くんの感想

 



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