ACADEMIC HACK! 実践研究会【実践を記録すること、物語ること、コミュニティをつくること】_場づくり裏話編

ACADEMIC HACK!実践研究会【実践を記録すること、物語ること、コミュニティをつくること】の報告編に続き、「場づくり裏話編」をお送りいたします。

今回のACADEMIC HACK!では、私は「場の演出」に関わる部分を担当させていただきました。

会場は東京大学工学部2号館。4年前まで私も授業を受けていた教室です。

 

写真からも、普通「大学の教室」と聞いて思い浮かべる空間とは少し異なる様子になっていたことはご想像いただけるかと思います。

会場は机と椅子を全て片付け、照明を落としました。4つの置き照明とスクリーンだけが会場を照らしています。受付を済ませた方から、靴を脱ぎ、好きな場所に 腰を下ろしていただきます。その際の音楽はちょっと耳慣れないフランス語の歌をセレクト。子どもの歌声や話し声も入っています。これからご覧いただく森で の子ども達の様子に少しでも気持ちを近づけていただくために。高瀬美紀さんに北鎌倉の山から持ってきていただいた草花も、会場入口で皆様をお迎えしました。

日が落ちた夏の夕方、森の中で小さな炎の光の中小西さんを囲んでいるような雰囲気で、お話ができればと考えました。

 

 

今回私が場の演出を通して目指したことは、以下の3つのことです。

①参加者の皆様に、すんなりと「森のようちえんの世界」に入っていただくこと

②小西さんが世界を見ていらっしゃる「見方」を体験していただくこと

③「日常の学びの場」を「今回の学びのスタイルに合った場」にかえること

 

場づくり裏話編では、それぞれについて、ちょっと裏話をしたいと思います。

まずは、

①参加者の皆様に、すんなりと「森のようちえんの世界」に入っていただくこと

参加者の方は「森のようちえん」の話を聞きにいらしているのだから簡単なことだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは意外と難しいことだと私は考えています。

イベントは金曜日の夕方。1週間働いた大人達が、東京の大学で、清里の森の中、それも子ども達の世界に思いを馳せることはきっとそんなに簡単なことではありません。

照 明を落としたのはスライドショーを見ていただくためでもありますが、柔らかな照明の中、心を落ち着かせ緊張をほぐしていただくことができたのではと思いま す。フラットな空間で裸足になっていただくことには、平日のお仕事の中で身にまとった様々なものをゆっくりと脱いでいっていただきたいという意図もありま した。

子どもたちの話し声などの入った楽しげな音楽は、ちょっとしたあそび心を呼び起こすため。山の草木はきっと誰でも足を運んだことがある森や山の草木の感触や香りを思い出していただくきっかけになるように。

中原先生から、鷲田先生の言葉を引用して、「大人はいつも”pro”(前)という前のめりな視点で物事を見る傾向にあるのでは」というお話がありました(報告編)。そういう鎧を自然と脱いでいただければと考えました。

北欧に旅行した際に見つけたポスターで、私が大好きなものがあります。

“All people are children.  All children are people.”

大人の中に点線で描かれている子ども。誰の中にもいるこの子を呼び起こす仕掛けです。

 

そうすることにより、ゲストの小西さんともできる限りフラットに、まるで森の中の語らいのように対話が生まれるようにという思いもありました。

 

次に、

②小西さんが世界を見ていらっしゃる「見方」を体験していただくこと

実は世界をありのままを見るということはとても難しいということは、これまで報告編にも書いてきました。ならば、あの場を通してそれを疑似体験していただきたいと考えました。

そして出した結論が、高瀬美紀さんに「北鎌倉の山に”今”生きている草花を持ってきていただく」ということでした。

高瀬さんは、北鎌倉のご自宅や銀座、二子玉川などでお花の教室をなさっています。伝統的な華道を学ばれた後、自然の中に「今」あるお花、草木の美しさをそのままに生かすという独自のスタイルで活動されています。

鎌倉出身の母に誘われて、初めてご自宅でのレッスンに参加させていただいた日、そういったお考えを伺って、私にはなんだかそれがとてもすんなりと入ってきたのを覚えています。

そして直感的に、高瀬さんをお呼びしたいと思ったのです。

ACADEMIC HACK!当日もお話させていただきましたが、 小西さんが子ども達を見ていらっしゃる目線と、高瀬さんの草花を見ていらっしゃる目線には、共通点があると感じたからです。

 

この日高瀬さんが持ってきてくださったのはこちらの草花たち。

 

7 月の初旬、あじさいは旬の季節の終わりに近づき、かすんだような味のある色合いになります。そして、7月という夏の始まりに、山では花の姿よりも木々の緑 が目立つようになるそうです。それをよく見ると真っ赤な実がなっていたり、重なり合う緑の色が微妙に異なっていたり。そういった北鎌倉の山の今、「ありの ままの姿」をそのまま、持ってきていただきました。

 

そして最後に、

③「日常の学びの場」を「今回の学びのスタイルに合った場」にかえること

今回は大学の教室を借りてイベントを行いました。

前面には他ではあまり見た事もないような大きな一面ホワイトボード、100人以上が座れる机と椅子。もちろんこの教室をそのまま使うこともできました。

しかし、私たちが今回目指した学びのスタイルは、視覚、聴覚といった五感を使い、たくさん「感じる」ことによる学びという側面が大きいものでした。

今回は、教室の普段の姿を、いかにそういった今回特有の学びのスタイルに合った場にするかという実験の場でもあったのです。

それを実現しようとした際に、最も時間を費やしたのは、意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「掃除」でした。

嘘だと思う方は(そうでない方も笑)、この準備を撮影した動画をご覧ください。

中原先生もブログに書いていらっしゃる通り、場づくりの大半の部分はとても地味な作業の積み重ねだということを今回改めてスタッフ一同感じました。

3時間かけた掃除の甲斐あって(?)、横になってリラックスしてくださる方もいらっしゃいました。

 

靴を脱いでいただくこと、電気を消した中に置かれた置き照明、草木、お花や音楽などによって作られた場の空気。今回の学びのスタイルに合う場を実現するため、具体的に行ったしかけは①や②で書いた通りです。

一方で、それだけでは学びの場は完成ではありません。あくまで「箱」を用意したに過ぎないのです。

そこにぽつぽつと人が集まり座り始め、だんだんと場の空気が柔らかくなり、トークが始まり、対話が生まれ…

このようにして、参加者の皆さんやそのアクティビティが加わることによって、その箱に息が吹き込まれ、その箱は変化していきます。

 

少 し話は変わりますが、以前、「親子連れが歩行者空間のどんなところで立ち止まっているか」という研究をしたことがあります。その時に私が一番おもしろいと 感じたのは、「既に立ち止まっている親子連れのところに、引き寄せられるように別の親子連れが来て立ち止まる」ということでした。

先に立ち止まっている親子連れを見て、他の親子連れはその場所を自分たちも立ち止まってよい場所として認識したのかもしれません。

人は、環境の中に埋め込まれた色々なタネ、それによって作られた場の空気の影響を受けます。そしてその人は、別の人にとってはまた環境の一部となりその人に影響を与えるというわけです。

 

そう考えると、ご参加いただいた皆様も、学びの主役でありながら、同時に学びの場をつくる一要素になっていたとも考えられます。

私たちが学びの場のデザインを考える際に、「おもてなし」を常に意識するのは、一人一人の学びの主役達がいかに学ぶかということが、全体の学びの場をつくるからなのではないかと改めて振り返りました。

 

今回は、自分たちの場づくりについて、改めて色々なことを考える機会になりました。

計画通りにいかないこともありましたが、それも「実験」の醍醐味!

ACADEMIC HACK!にご参加いただくことによって、私たちの「学びの場づくり」の実験に(いつの間にか)ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。


最後に、皆様をお迎えする準備をする中原先生、学生スタッフの山根君、小池君、そして私。

掃除なのに、なんだか嬉しそう笑。

 

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